婚活にまつわる最も不毛な議論と思うのが、年収が切り口のテーマのそれ。いわく「女性の3分の1が年収6百万円を希望。しかしそんな未婚男性は5.7%しかいない」とか、「共働きするべきだ、夫婦合算で年収600万円ならいいじゃない」など。確かにそのとおり、正論に違いありません。
しかし、こうした理屈をこねられるのは他人事だからだと思います。自分の事として考えたら、こんな世知辛い世の中で「高い年収の男性」を希望するのは当然のことだと思います。
この記事は、年収ミスマッチ論をおさらいしたうえで、「いや、それ、無理があるでしょう…」と一矢報いたいと思います。ぜひ最後までお読みください。
年収ミスマッチ論
冒頭でも申し上げたとおり、すっごく明快なロジックです。つまり「女性の3分の1が、年収6百万円の男性を希望。でもそんな未婚男性は5.7%しかいない」。あるいは枕詞が「女性の3分の2」となり「年収4百万円の独身男性は、全体の4分の1しかいない」ーーミスマッチだ、といった具合です。
もっと凄い論法としては、年収1千万円の未婚男性が引き合いに出されます。それは0.14%しかいない。そのうえで、分際を痛感するようなセリフがたたみかけられますーー「あなたにそれに見合う魅力がありますか?」「0.14%といえばクラスどころか、全学年を通じて一番の美人という位置付けだ」云々かんぬんと。
こうも大上段からバッサリ切られたら(=つまり正論)、「確かにそうですね」と言わざるを得ません。
夫婦合算論
年収が高い男性は極めて少ないし、専業主婦だなんって贅沢いってる時代じゃないし、あなたも働いたらいかが?という主張をなさる人たちがいます。いわく「希望年収を2百万円下げれば、対象となる男性は2倍になる」そのうえで、「夫婦合算すれば、6百万円もあるじゃないか」という論法です。
こちらも至極まっとうな正論なんですが、多くの独身女性が消化不良を起こすに違いありません。
反論その1.当事者になってみてください
こうした話を「確かにーー」と頭で理解しても、婚活サイトや結婚相談所で活動を始めるやいなや、そんな話はすっかり忘れ、男性なら若くて綺麗な女性を、女性なら年収やステイタスなど条件のいい男性にアプローチしまくるに違いありません。
なぜ、断言するかといえば、私は仕事(=婚活コンサルタント)で、そんな現場を「いやっ」というほど見てきたからです。例えば、「私、もういい年ですから贅沢は言ってられません」「40代子持ちの女性でもOK」と殊勝な態度の48歳の男性が、いざ活動を始めると20代前半の女性ばかりにアプローチしたり。もうそれは、枚挙いとまがありません。
また、「条件を下げる」というのは生活レベルを落とすことを意味します。これ、難しいですよ。言うが易し…の典型です。食事は不味くなる、部屋は狭くなる、スタバにいけなくなる。そんなこと愛があっても難しい。まして婚活とはこれから愛情を抱く相手を選ぶのに、なぜ最初から条件を下げられようか、と私は思うのです。いや、多くの独身者が思うのではないでしょうか。
反論その2.いろいろな壁がある
不景気で先が見えないご時勢ですから、防御策としてお金があるに越したことはありません。そして一人の女性が結婚生活を送るうえで遭遇する様々なできごとを考えると、より一層この想いを強くするでしょう。
妊娠したら退職を強いられるとか、保育所にすんなり入れないとか、復職しても収入が減るなど。これまで世間の冷たい風にさらされてきた、か弱き乙女が「はい、わかりました」とやすやすと条件をさげたり、「がんばりま~す」と共働きを決意するとは思えません。
反論その3.現場レベルの実効力がない
年収ミスマッチ論や夫婦合算論を叫ぶ方々が、真摯な気持ちで提言されていることは承知しています。少子化の解消につながるとか、未婚率がさがるとか。あるいは、ある種の親心だったりします。がしかし、このハイエンドのロジックは、現場でなかなかワークしないというのが実情だと思います。
例えば、この論理を世の中に浸透させる担い手として、いの一番にあげたいのが結婚相談所のアドバイザーさんたち。直接、相対している人がいちばん影響力や説得力を持つからです。実際のところ、成婚率の高いアドバイザーさんは、あの手この手をつかって条件を緩和させることに長けています。
しかし、そんな腕のいい人は少ないし、この業界は集客がむずかしくそこに労力をとられるので、既存の会員に対面する時間を十分とれないという残念な状況もあります。論理的には正しいと思うんですが、実効する手立てがほとんどないんですよね。
まとめ
婚活に真剣に取り組んで半年や一年もすれば、多くの人がわかります。「このままじゃまずい」と。だから、方向転換を図るわけですが、その打ち手として条件を緩和する人が少なくありません。もちろん(女性にとっての)希望年収も決して聖域ではありません。それが結婚に結びつきやすくなる有力な要因であることは様々な調査が示しているとおり(例:三菱東京UFJ R&Cやメディア・マーケティング・ネットワークの調査)。
一言でいうと「やってますよー」ということです。つまずいて転ぶからこそ、身に沁みてわかることだと思います。メディアや講演会や座学でいくら訴えても無理無理。
一方で、それでも初心を貫き通す人がいます。代表的な意見としては、「そこまでして、結婚したくない」というもの。最後は個人の自由だから、尊重するべきだし、他人がとやかく言う問題ではありません。まして、「高望みしすぎだ!」などと言い放つのは暴言以外の何物でもないでしょう。
ただし、(繰り返しになりますが)年収ミスマッチ論や夫婦合算論は、正鵠を得た正論そのものです。もし婚活に行き詰まったら、思い出してみてください。解決の糸口になるかもしれません。
・そして気になるこちらの記事もチェック → 結婚適齢期はないが、出産適齢期はある?|卵子老化の衝撃
コメント